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『児童売春』(学徒出陣より)

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物乞いのクソガキが慰安所に来た。
「子供の来る所じゃないからさっさと帰れ」
そう言っても帰らない。私の食べている豆が欲しいらしいが、こっちも食うや食わずの生活をしている。

何でも良いから物をあげれば帰るだろうと思い、兵士の忘れていったタバコを3本ほどあげたが帰らない。困っていると川島がトイレから戻ってきた。
「何だこのクソガキは?」
「知らん。腹が減ってるらしい」
川島の目の色が邪悪に変わり、良くないことを思いついたらしい。
「おい、ロリコンの変態野郎とやらせれば金になるぜ」
こいつは何て下劣な奴なのだろうかと思った。

「西村、客さがしてくるから面倒見てろよ」
彼は浮き立って街の方角へと走って行った。最近、川島も苛立ってきているので好きにさせるようにした。いつまでも子供をこんな所に置いておけないので奥に連れて行った。私は仕方なく豆の入った皿を持たせてスプーンを渡した。彼女のこれからのことを考えると、それくらいしてやってもお釣りは来るだろう。

私は安全ピンの針を出したり入れたりしながらぼーっとしていた。作り笑顔で鼻くそをほじっていたら血が出た。避妊具の在庫が少なくなったので発注しなければならないと思った。
子供に水でも出してやろうと思いコップに水道水を入れて持って行った。よく見ると子供はずいぶん身体が汚れている。面倒を見ろと言われたが子供を風呂に入れるのなんて面倒だし、川島にやらせれば良いと思った。

急に入口のドアが開き、客かと思ったら斑田だった。信じがたいことに彼は古い大きな刀を抱えており、どこから持ち出したのか見当も付かなかった。あまり慰安所に変な物を持ち込まないで欲しいと思った。彼はこっちも見ずにトイレの方に向かって行った。

入れ替わって川島が戻ってきた。騒がしい1日だと思う。
「おい、客が見つかったぞ。ガキを離れた部屋に入れといてくれ。喜べ3倍は取れるぞ」
そしてまた出て行った。こういう時のあいつの行動力は感心するけれどこんなことに加担していたら、私のカルマは底に落ちて来世がウジ虫になるだろう。来世のことは諦めて、私は飛び地になっている個室に子供を連れて行った。ぞうきんで顔くらいは拭いてみたが後はもう知らない。

川島と醜く太った中年男の軍属が客として入ってきた。私は気取って子供の居る部屋を指差して、醜く太った中年男を誘導した。「分け前だ」と川島が何枚かの現金を握らせてきた。
「他の売女に気づかれんなよ」
「じゃあ派手にやらない方がいいんじゃないのか?」
「当たり前だろ。だから今日いっぱい稼ぐんだよ。ガキは明日に追い出せよ」

川島は一服してくると外に出て行った。あいつは一体、何人とやらせる気なのか知らない。今からとても悲しいことがこの慰安所で起こるようですが、私はカカシの気持ちになりました。
やがてだんだん泣き声のような、争いごとのような音声が聴こえてきましたがそれは幻聴で私は心の無い、人の形をした何かです。

「何だ揉めごとか?」
いつの間にかトイレから戻っていた斑田が私の前に立って言った。私はハイライトの消えた目をしていたので、何もかも反応が鈍くなっていた。反応が遅れている内にすでに斑田は刀を抜いて子供の居る個室を蹴破らんとしていた。
「あの、ちょっと・・・」
私は声をかけたがもはや手遅れで、ただこの人は刀の試し斬りがしたかったのだ。ドアは最小限に抑えられた音で破られ、腰に構えた刀が醜く太った中年男の肝臓を背後から正確に貫きその下に組み伏せられていた子供の腹部をも串刺しにした。軍属の中年男は声もなく絶命し血も飛び散らなかった。子供はわずかに息があった。

一服を終えた川島が戻りその惨状を見て激昂した。
「何でお前らはすぐ人を殺すんだよ!まだガキだぞ、イカレてんのか?儲け話を台無しにしやがって!」

私はもう返す言葉も無かった。
「いや、子供の方はまだ生きてるし。病院に行けば助かるかも・・・」
「病院に連れてけるわけねえだろ。とどめを差しとけよ」
川島は怒ってどこかに出て行った。そして私はカカシになり悲しいことから目と耳を背けた代償というものを味わっていた。

最終的に斑田が刀で子供を殺して、私はまた死体の処理を手伝わされることになった。醜く太った中年男の死体は裏の大河川へ捨てるのに苦労したが、子供の死体は軽くて楽だった。