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新刊予定(仮)

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野蛮と蒙昧が君臨した土地から逃げ出し
みすぼらしいラバに乗って
ピストルの弾からほぐした火薬を舐めて
私は空腹を紛らわしていた
頭上では腐肉食の鳥類がぐるぐる回っている
気に障るのでライフルを撃って追い払い
それらは卑劣な生き物らしく
昂ぶった下品な鳴き声をあげて離れていった
空から泥の色をした羽根が何枚か降ってきた
それを一枚拾って鍔広の帽子に挿し
私も彼らのように生きようと思った

2016/xx/xx

奴隷馬車強奪の惨事から逃亡したあの投機人は、いくつもの国境を越えて、西の大海と東の大海をつなぐ運河の街にたどり着いた。所持金の尽きた彼は、運河の街に拠点を置く企業「合州国フルーツ社」で働き口を求めた。

【新刊】WEB販売の案内

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1部300円+送料360円。最大2部まで。
支払いは銀行振込のみ。
送付は日本郵政レターパックライト。
http://www.post.japanpost.jp/lpo/letterpack/

『人身売買における諸問題』2014年 約16,000字
※過去シリーズの続編ではありません。
※本の形態は手製本のコピー誌です。

タイトルと部数を下記メールアドレスまで送ってください。
violentvideoinfo@gmail.com
特定商取引法に基づく表示を含め返信します。

【既刊】WEB販売の案内

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上から順に1作目~4作目(完結)

1部500円+送料360円。各最大2部まで。
支払いは銀行振込のみ。
送付は日本郵政レターパックライト。
http://www.post.japanpost.jp/lpo/letterpack/

『@ルーザー』2000年 約35,000字
『セックスマシーンと敗北者』2004年 約26,000字
『文化祭大革命』2008年 約27,000字
『学徒出陣』2012年 約27,000字
※本の形態は手製本のコピー誌です。

タイトルと部数を下記メールアドレスまで送ってください。
violentvideoinfo@gmail.com
特定商取引法に基づく表示を含め返信します。

『児童売春』(学徒出陣より)

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物乞いのクソガキが慰安所に来た。
「子供の来る所じゃないからさっさと帰れ」
そう言っても帰らない。私の食べている豆が欲しいらしいが、こっちも食うや食わずの生活をしている。

何でも良いから物をあげれば帰るだろうと思い、兵士の忘れていったタバコを3本ほどあげたが帰らない。困っていると川島がトイレから戻ってきた。
「何だこのクソガキは?」
「知らん。腹が減ってるらしい」
川島の目の色が邪悪に変わり、良くないことを思いついたらしい。
「おい、ロリコンの変態野郎とやらせれば金になるぜ」
こいつは何て下劣な奴なのだろうかと思った。

「西村、客さがしてくるから面倒見てろよ」
彼は浮き立って街の方角へと走って行った。最近、川島も苛立ってきているので好きにさせるようにした。いつまでも子供をこんな所に置いておけないので奥に連れて行った。私は仕方なく豆の入った皿を持たせてスプーンを渡した。彼女のこれからのことを考えると、それくらいしてやってもお釣りは来るだろう。

私は安全ピンの針を出したり入れたりしながらぼーっとしていた。作り笑顔で鼻くそをほじっていたら血が出た。避妊具の在庫が少なくなったので発注しなければならないと思った。
子供に水でも出してやろうと思いコップに水道水を入れて持って行った。よく見ると子供はずいぶん身体が汚れている。面倒を見ろと言われたが子供を風呂に入れるのなんて面倒だし、川島にやらせれば良いと思った。

急に入口のドアが開き、客かと思ったら斑田だった。信じがたいことに彼は古い大きな刀を抱えており、どこから持ち出したのか見当も付かなかった。あまり慰安所に変な物を持ち込まないで欲しいと思った。彼はこっちも見ずにトイレの方に向かって行った。

入れ替わって川島が戻ってきた。騒がしい1日だと思う。
「おい、客が見つかったぞ。ガキを離れた部屋に入れといてくれ。喜べ3倍は取れるぞ」
そしてまた出て行った。こういう時のあいつの行動力は感心するけれどこんなことに加担していたら、私のカルマは底に落ちて来世がウジ虫になるだろう。来世のことは諦めて、私は飛び地になっている個室に子供を連れて行った。ぞうきんで顔くらいは拭いてみたが後はもう知らない。

川島と醜く太った中年男の軍属が客として入ってきた。私は気取って子供の居る部屋を指差して、醜く太った中年男を誘導した。「分け前だ」と川島が何枚かの現金を握らせてきた。
「他の売女に気づかれんなよ」
「じゃあ派手にやらない方がいいんじゃないのか?」
「当たり前だろ。だから今日いっぱい稼ぐんだよ。ガキは明日に追い出せよ」

川島は一服してくると外に出て行った。あいつは一体、何人とやらせる気なのか知らない。今からとても悲しいことがこの慰安所で起こるようですが、私はカカシの気持ちになりました。
やがてだんだん泣き声のような、争いごとのような音声が聴こえてきましたがそれは幻聴で私は心の無い、人の形をした何かです。

「何だ揉めごとか?」
いつの間にかトイレから戻っていた斑田が私の前に立って言った。私はハイライトの消えた目をしていたので、何もかも反応が鈍くなっていた。反応が遅れている内にすでに斑田は刀を抜いて子供の居る個室を蹴破らんとしていた。
「あの、ちょっと・・・」
私は声をかけたがもはや手遅れで、ただこの人は刀の試し斬りがしたかったのだ。ドアは最小限に抑えられた音で破られ、腰に構えた刀が醜く太った中年男の肝臓を背後から正確に貫きその下に組み伏せられていた子供の腹部をも串刺しにした。軍属の中年男は声もなく絶命し血も飛び散らなかった。子供はわずかに息があった。

一服を終えた川島が戻りその惨状を見て激昂した。
「何でお前らはすぐ人を殺すんだよ!まだガキだぞ、イカレてんのか?儲け話を台無しにしやがって!」

私はもう返す言葉も無かった。
「いや、子供の方はまだ生きてるし。病院に行けば助かるかも・・・」
「病院に連れてけるわけねえだろ。とどめを差しとけよ」
川島は怒ってどこかに出て行った。そして私はカカシになり悲しいことから目と耳を背けた代償というものを味わっていた。

最終的に斑田が刀で子供を殺して、私はまた死体の処理を手伝わされることになった。醜く太った中年男の死体は裏の大河川へ捨てるのに苦労したが、子供の死体は軽くて楽だった。

『ドッグタグ・フィスト』(学徒出陣より)

わずらわしい豪雨が降っている。慰安所を開けても人の来る気配がない。窓の外を見ると大きな粒の雨が地面をえぐっている。雨がふっても散る花は無いしうるおう作物も無い。後ろの大河川で轟々と水が流れている。こんな基地は早く敵に攻撃されてみな殺しにされれば良いと思っていた。

遅刻した川島がズブ濡れになって入ってきた。上官はいつものように売女を連れ出して居ない。遅れても咎められる心配もない。彼は客である兵士が忘れていったタバコに火をつけた。軍務に慣れたせいか班員たちの態度は大きくなっていた。斑田もこの豪雨のなか見回りに行くと勝手に出ていった。私は昨日の使用済みタオルを投げてやった。彼はそれと気づかず濡れた顔や頭をふきはじめた。

「売女どもがうるせえ」

川島が控え室の方をにらみ付けて言った。豪雨のせいで慰安所に兵士が来ない。商売が始まるのを待っている女性たちの雑談が漏れている。私は関わりたくなかったので気に留めないようにしていた。せめてラジオでもあれば何も感じなくて済むのにと思った。

川島がうす汚れた袋に手を突っ込んで、何か金属音をジャラジャラと言わせ始めた。私はこいつの方がうるさいと思って近寄った。見ると袋には兵士たちが身に付ける認識票がたくさん入っていた。チェーンのついた金属プレートに氏名や血液型が刻印されている。戦死傷者の物だろうか。どこから持ち出してきたのか気味の悪いやつだ。

「そんな物をどうする」
「売女どもに焼きを入れるんだよ」
川島が器用に6枚のプレートを指と指の間にはさんで、チェーンを拳にぐるぐる巻きつけている。やがて彼の両手は突起物のついたカギ爪のようになった。
「やめておけよ」
「一人二人殴ったって誰も気にしねえよ」

こいつは気が狂ったのか、悪いクスリでもやったのだろうか。こんな凶器で人間を殴打をしたら無傷では済まない。私は要らぬトラブルに巻き込まれたり、また死体の処理をさせられるのが嫌だった。川島は両方の拳をがちがち言わせている。

「やるならここでやるなよ。外でやるとか他にあるだろ」
「こんな雨の中を誰が歩いてるんだよ」
「誰かはいるだろう。そいつをやればいいだろ」
「関係ないやつやってどうするんだよ。ふざけてんのか」
「じゃあ一人だけ帰すからそいつを外でやればいいだろ」
「一人だけやってどうするんだよ。全員やるんだよ」
「客が来たらどうするんだよ。おかしいだろ全員殴られてたら」
「顔じゃなくて腹を殴ったら文句ないだろ」
「誰がそんなやつに金を払うんだよ!」
「それで興奮するやつもいるだろ!嫌なら追い返せ!」

口論をしているとズブ濡れの斑田が戻ってきた。彼は私たちを見もせずにタオルを取りに奥へ行った。口げんかを続けるのが馬鹿らしくなって両方とも黙った。嘲笑うようにまだ控え室の向こうから雑談の声が漏れてくる。ついに川島が立ち上がりドアに近づいて思いきり蹴りつけた。

「うるせえ!殺すぞ!」

そう怒鳴って認識票の拳でドアを殴りつけた。プレートがドアに突き刺さり拳を引いたときにチェーンが切れて床にバラバラ散らばった。川島はそれ以上なにもせず肩を怒らせて慰安所から出て行った。

そのとき私は天井の雨漏りを見ていた。罪を被り、堕ちし者の償いとは何なのだろうかと考えていた。強い雨音に混ざって立て続けに発砲音が聴こえてきた。怒った川島が雨天に向かって借り物の拳銃を撃っていた。それで気が晴れるならそうすれば良い。しかしあいつは弾丸の不正使用を監督官にどう言い訳するつもりだろう。


認識票:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%8D%E8%AD%98%E7%A5%A8

『青年志願兵 適性診断テスト結果』(学徒出陣より)

■西村 彦次 第96班所属
性格
社会の規則や常識などという物にほとんど縛られないタイプです。考え方が非常に無責任というか、とにかく反体制的であることは間違いありません。周りの人々の動向を余り気にしないタイプで、自分に対する批判もすべて受け流すタイプです。行動は徹底した合理主義者でどんな事態に直面しても、割り切った上で躊躇すること無く処理するタイプです。

配置
重い責任や使命を課せられるような仕事はまったく不向きです。常に人の顔色や態度を見て、臨機応変な対応を迫られるような職務も避けた方が無難です。

対人
遁世の傾向があり、それほどで無くとも我関せずという個人主義、孤立主義の色合いが強まって行きそうな傾向が有ります。そこの所を適当に調整する必要が有るでしょう。

■川島 潔 第96班所属
性格
自分の本能的な欲望を満足させるために稚拙な知恵を絞っており、姑息で人間としてのスケールがかなり小さいタイプです。このままでは行き着く先は見え見えで、ろくな結果にならないことは疑う余地がありません。どうすれば良いのかと申しますと、少しは人に信頼される人間に指導するということがまず第一条件です。

配置
現在の人格が当分の間変わらないものと仮定した場合には、どうでも良いような仕事のどうでも良いような職務に就くしかないでしょう。いわゆる余計者になる可能性が非常に高いです。

対人
課題が多過ぎて何をどうすれば良いのか迷う所ですが、次に記す三つが解決できればうまく行くこともあるでしょう。人並の責任感や倫理感を持つこと。人並の思いやりや同情心を持つこと。人並みの妥協と気配りをすること。

■斑田 謙一 第96班所属
性格
自分の感情が平板で、喜怒哀楽に不感性な人間であることを熟知しているタイプです。親や友人の死に直面しようと、一種の絵空事のような感覚でしか受けとめられないタイプです。常識や判断力は人に劣りませんが冷たく無感動な性格という人間像を偽ることはできませんので、次第に孤立していく可能性の高いことは否定できません。

配置
各種の技師などに活路を求めるべきでしょう。人間離れのした感覚の持ち主である為、なるべく人から遠ざかった場所での職務が無難であると考えられます。

対人
感受性欠乏症とでも呼ぶべき気質に生まれついている可能性が高く、性格を変えなさいと言った所で無理な話ですから、とにかく世間と没交渉にならないよう心掛けて行くことが有効な方策でしょう。

(エゴグラムによる性格診断を参考 http://egogram-f.jp/seikaku

あの商店街 時事番外

学校を襲った停電と断水が自然災害による物だったことを私は下校中の商店街で見たテレビで知った。どこかのド田舎で異常気象からくる害虫の大量発生が原因で、発電所の重要な機関にそれらが入り込み機能がマヒ状態に陥った。こんな下等生物の所業でいったい何人の生徒が無実の罪で虐殺されたことだろうか。そう思うと私は人間以外の生物に八つ当たりでもしないと気が収まらなかった。こういう時はこの街、唯一のペットショップに足を運ばざるを得なかった。
電気の復旧した商店街は壊れていない照明以外は点灯しいつものように薄気味の悪いBGMが流れ貨幣経済そのものを呪詛していた。この陰気な商店街がこれ以上暗くならなくて良かったと思った。

なじみのペットショップに入ると店主が「西村君、停電のおかげで酸素ポンプが止まって熱帯魚が全部死んじまったよ」と肩を落としていた。昨日まであんなに元気に餌の生きたネズミを食らっていた南米の肉食魚たちが今では力無く水槽の上で横たわっている。ただでさえ生きている生物より死んでいる生物の方が多いこのショップはさらにその比率を偏らせているようであった。
犬猫やげっ歯類に飽きた店主は商品ラインナップの一新をはかり奇妙な昆虫や熱帯魚を大量に密輸した。しかし、昆虫はこの国の気候に合わず早々に全滅して軌道に乗り始めた熱帯魚も死に絶えてしまった。店主は「こんなもの猫だって食べないよなあ」と呟きながら魚の死骸をビニル袋に詰めて捨てた。彼が死骸を処理するのは珍しく、大きなショックを受けているのがその殊勝な行動からよく分かった。

あまり行きたくなかったが憂さ晴らしのアイテムを求めてゲームショップに入った。いつ行っても店主がポルノゲームで自慰に耽っており常に精液の臭いが立ち込めていた。それがゲーム機の本体やカセットの基盤から発する臭いと混ざり合い凶暴なバイオマシーンに支配された暗黒の未来だけを私に想像させた。その想像に違わず彼は自慰行為にわずかでも水を差されると使用済みの性玩具やポルノゲームのパッケージを相手が客であろうと猛烈な勢いで投げ付けてくる。
入ると案の定店内は荒れており壁に叩きつけられてバラバラになった中古ゲーム機や引きちぎられたケーブル類がやはり破滅的な未来世界を彷彿させた。店主はレジ奥の座敷で下半身丸出しで転がっており自慰に疲れて眠っているようだった。荒廃した未来を舞台にしたSFなゲームが欲しくなったが私は肝心なことを思い出した。

数日前、両親の形見でもあったTⅤが何の理由も無く映らなくなってしまった。恐らく成仏したのだろう。これではゲームを買った所で遊べないのは明白だった。私はいち早くこの不快な空間を立ち去ることにした。商店街に寄り道をしたはいいが憂さなど晴らせず苛立ちだけが無闇に積もった。ミリタリーショップのじじいは持病のヘルニアが悪化し近隣のERに搬送されたが在りもしない軍病院での治療にこだわり続けた挙句、精神病院に移送されてそのまま休業になってしまった。
私はとぼとぼと商店街を抜ける道を進むと先週、娘が首吊り自殺をしたことにより廃業してしまった電気屋に廃棄された家電が大量に積んであった。私は新しいTⅤが手に入るのではないかと家電の山を漁り始めた。トースターやマッサージ機など必要の無い物ばかりでうんざりしたが小型冷蔵庫の下敷きになる形で薄い液晶TⅤを見つけた。冷蔵庫の角がモニタを圧迫しており損傷している。それでも私は引きずり出し自分の部屋まで持って帰った。動くか分からないのでゲーム屋には戻らなかった。

古いTⅤをどけて新しいTⅤを配置した。電源を入れると私の部屋にはアンテナが繋がっていないので酷く歪んだ。液晶の破損した部分はノイズとカラーとモノクロが濡れたように滲んで混ざり合い恐ろしい異次元へと繋がるトンネルのように見えた。しかし音声はまともだった。
適当にチャンネルを逆に進めるとよく分からない都市の断片映像と外国語の歌が聴こえてきた。それはロックの音楽で演奏しているのは白人、よく知らない白人だけど過去にたくさんの人々を酷使してその富を奪ってきた卑しい民族に違いない。眺めているとその音楽は私を和ませ奮わせ優しさや激情を生んだ。

あの学校 時事番外

この学校は生徒の気が全員狂っており常に何かを壊したりしていないと落ち着かなかった。そういう事を制止するとより大きな破壊が起こった。だからいつも何かが壊れいつも何かを直しているのが普通の状態だった。大体が水道の蛇口がねじ切られたりドアノブがへし折られ開けられなかったりしている。生徒たちはそういう状態に慣れていたし、自分で壊したもので自分が困るような因果応報にも受け入れていた。受け入れたといっても大抵が暴力になったり別の破壊に繋がった。この悪循環はこの学校のイデオロギーそのもののように止まらなかった。

いつものように登校し1限目の英語という名の西洋ポルノの垂れ流しがクライマックスで映像が止まった。「殺すぞ!」「さっさと直せ!!」「このクソ女の口だけじゃもう出ねえんだよ!」。授業中フェラチオして回らされていた女生徒が髪をつかまれてパイプ机の足にガンガン叩き付けられている。このため英語の授業は人気があったが、私はフェラチオ恐怖症なのでやり過ごしに苦労していた。しばらく騒然としたがモニターの映像だけではなく教室のライトも消えて薄暗くなっていた。これは停電ではないかといかに低俗な生徒たちでも言い始めた。

ベルは鳴らないが授業の終わりの時間になり生徒たちは席を立ち始めた。ただ騒いでいるのは最後の順番でイケなかった男子生徒だけであった。私も席を離れていつものように体育館前の冷水機に向かって水を飲もうとした。しかし冷水機のペダルを踏んでも水が出ない。気づくと私は冷水機に何度もヒザ蹴りを入れていた。本体が大きくゆがんでもうまともに動きそうになかった。私もこの学校の生徒なのだと強く感じた。

体育館ではライトが消えて闇に乗じて誰かが気に入らない誰かを殴ったことをきっかけに乱闘が起きた。体育の授業中でみな動きやすい格好をしていたので激しいものになった。バレーボールのネットでがんじ搦めになり跳び箱の段で殴り回したり流血騒ぎだった。プールの方ではシャワーの水が出ず、塩素臭い体を洗えないことから来る不満でやはり乱闘になった。ビート板で殴ったり、水に叩き落としたり、消毒剤を投げ付けプールに大量に流し込んだりした。

この学校を停電と断水が襲ったのだ。どこかの完全に狂ったバカが設備を壊したのだろう。これはろくでも無いことになる。早退したかったがここ暫く早退者のあまりの増加に生徒会が規制を加え始めた。あの連中は気が狂っているのでこんな状態になっても方針は変えない。あと最近早退者を殺す早退者殺害部というものが結成され授業中・休み時間を問わず帰ろうとする者を遠距離からさまざまな物を使って攻撃してくるので早退は大きなリスクが生じるようになった。

私はこの学校生活での最悪の1日のひとつになると直感した。育ち盛りの生徒たちに水も食物も1日中与えられない。購買部はとうぜん襲撃や略奪を見越して閉鎖していた。食べ物を持ち込んでいるやつは強奪される。プールの水は乱闘の過程で消毒剤が大量に混ざって飲めなくなってしまった。電気が来ないので授業は教科書を使うしかなく退屈に耐えかねてとうぜん暴力沙汰が頻発する。レイプのための女生徒の奪い合いも始まる。愚劣なことにほかの設備もまた次々と破壊され始めるだろう。私はすでに冷水機を1台壊してしまったのだから。

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